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各国の補聴器販売の資格制度の厳しさランキング
日本の補聴器業界の問題は、日本補聴器工業会発表のJapanTrak 2025をみると色々見えてくるのですがちょっと海外に目を向けてみてそちらではどうなっているのか調べてみようかと考えました。非常に安直な方法ですがAIに訊いてみたところ以下のように回答がありました。補聴器販売において資格制度の難易度やその資格の独占性についてランク分けしました。
Sランク
ドイツ、フランス、イタリアがこれに該当します。。2~3年の専門教育を受けたうえ国家試験と免状(diploma)が必要。補聴器調整は準医療行為で無免許営業はほぼ違法だそうです。前記のすべての国の実情を述べていると紙面が足りそうもないので最も厳格な国ドイツについて解説することにしました。無資格販売を行うと高額な罰金、営業停止で場合により刑事罰が科されるようです。さすがドイツはマイスター制度の国ですね。最高に厳しいです。国家資格はゲゼレ(Geselle:職人)とマイスター(Meister:名人)の2段階となっています。義務教育後3~3.5年の座学と実技のデュアルシステムを受けます。半分は学校で理論(解剖学、音響学など)を学び残りの半分は店舗でマイスターの下で実技を学びます。修了試験に合格して初めてプロの職人として働くことができます。ゲゼレとして数年の実務経験を積み専門教育(経営学、法学、教育学、高度な実技)を受け厳しい国家試験合格すればマイスターになれます。マイスターにならなければ店舗開業や弟子の育成はできません。補聴器の調整だけでなくリハビリテーションなどの心理学的ケアや外耳道の状態確認をしてイヤモールド作製(カスタムメイドの耳栓)やベントの穴の調整をコンマ何ミリの精度で行います。実耳測定も日常的に行うようです。技術にプライドを持っているので医師からの信頼も厚いようです。また補聴器の調整室は、いろいろな騒音環境下での試聴ができるような音響設備(当院もあります)があるようです。日本とはえらい違いですね。
Aランク
スペイン、オーストラリア、ニュージーランド、韓国が次に厳しい国です。国家資格または公的登録が必要で持続的な教育制度があるようです。彼らの位置付けは医療と技術の中間職。こちらでも無資格販売をすると基本違法で登録抹消、罰金、行政処分が科されるようです。
では代表して人工内耳の国オーストラリアの実情についてAIに訊いてみました。オーストラリアでは、オーディオロジストとオーディオメトリストの2種類があり、オージオロジストは大学卒業後大学院で2年の専門課程を修め修士号が必要です。補聴器だけでなく人工内耳の調整、平衡機能検査(めまい検査)と診断、小児難聴の高度な検査ほぼ医療領域の診断リハビリをカバーします。オーディオメトリストは公的専門学校での学位と数年の実務経験が必要で、主に成人の補聴器フィッティングに特化していますが教育の質が国によって担保されています。また実耳測定が義務化されているところが驚くべき点です。この日本では残念なことに普及率が5%にも満たないと聞いています。
Bランク
アメリカがこれに該当します。Bランクになったのは資格制度が2制度であるところでSランクとAランクが同居しており、無資格で販売できるOTC補聴器がFDAが認可したこともあり(Dランクに匹敵)便宜上Bランクになっております。OTC(Over The Counter)補聴器は家電量販店などで無資格で販売可能な補聴器でiPodsなどの様にBluetoothイヤホンに補聴器機能が付加されたものや単独のものもあります。ソフト上で自分で聴力チェックを行い調整も自分で行います。従来の様に販売に資格が必要なものは処方(Prescription)補聴器と呼び明確に区別がなされています。日本でも専門店で販売されているものはこちらに該当します。もちろん当科で扱うのは処方補聴器のみです。
資格は、オージオロジスト(AuD)と補聴器専門家(HIS)の2つに分かれます。AuDは聴覚分野の博士号が必要で民間の耳鼻咽喉科クリニックで多く働いており、大学病院・総合病院では高度な診断、人工内耳の調整、学生の指導を行っています。補聴器・聴覚クリニックの開業、学校やリハビリ施設で言語療法士との連携でリハビリテーションを行います。一方HISは大手の補聴器チェーン店やコストコやウォルマートの補聴器センターでの販売、AuDがオーナーのクリニックで実務担当として働いています。
| 比較項目 | オージオロジスト (AuD) | 補聴器専門家 (HIS) |
| 主な役割 | 診断・予防・治療・リハビリ | 聴力テスト・販売・調整 |
| 対象者 | 乳幼児から高齢者まですべて | 主に18歳以上の成人 |
| 専門性 | めまい、耳鳴り、人工内耳も対応 | 補聴器の選定とメンテナンスに特化 |
| 働き方の特徴 | 医療チームの一員、または開業医 | 小売り・サービス業に近い形態 |
Cランク
中国、東南アジア諸国がここに位置付けられます。日本の様に誰でも売れる状態から資格制度の確立へと向かっているようです。
中国でも国家資格「助聴覚器験配師」があり4級から1級までレベル分けされています。4年制大学と3年制の職業技術学院の2種類があり、大学では聴覚リハビリテーション学の学士号が必要で、専門学校ではより実践的な技術を学びます。病院内の補聴器センターか補聴器専門店での勤務で専門店には有資格者の配置が義務付けられています。マイスター制のような職人的な制度はありませんが、それなりに国が管理している姿がうかがえます。東南アジアでもオージオロジストという職種は確立されています。補聴器フィッティングには専門のライセンスや登録が必要なケースが多く日本の様に誰でも売ることができるわけではありません。
Dランク
やっと日本が出てきました。なんと最低ランクのレベルだとAIが突き付けてきました。かつてGDP世界第2位まで誇った我が国が東南アジア諸国以下の規制がゆるゆるの国だったなんてなんと情けないことでしょうか。この事実は皆様に一番知っていただきたいことです。認定補聴器技能者がありますが、民間資格であり国家資格ではありません。しかも無資格で補聴器を販売しても合法で、補聴器医療に関して国は技術を担保してくれません。リテラシーを向上させご自身の聴覚はご自分で守っていただくしか今のところ方法はありません。別にこの分野に限らず自責思考でなければ生きていけない世の中ではありますが。

日本は匠の技の国ではないのか
この日本は、匠の技が光る国であったのはなかったのかと思います。海外のことを調べるにつれ情けない気持ちになってきました。この日本には世界にまねのできない技術を山のように存在します。半導体分野では、半導体製造装置、フォトレジスト、ABF(絶縁体)などの半導体素材ではかなりの世界シェアを占めています。日本のベアリングやファスナーはその信頼性で世界の覇権を握っています。このような国でどうして補聴器販売にその巧が生かせていないのでしょうか? 音に対するこだわりは匠とは別とは言わせません。SONY、Panasonic、ESOTRIC、LAXMAN、TEAC、Phasemation、CECなど錚々たるメーカーは近年ではオーディオは下火になったといわれていますがまだまだ健在です。日本では世界中の名器といわれるオーディオ製品が手に入ります。またオーディオアクセサリーはネット検索するとこれでもかとあふれ出てきます。日本人はこれほどまでに音のこだわりを大切にする民族かと驚かされます。これほどまでに繊細な感性を大切にする日本で補聴器に対するいい加減さは何なのでしょう。もちろん匠の技術で多くの人を救っている技術者もいるのも事実ですが平均レベルの低さが問題なのです。こうなってしまった原因については、「補聴器の販売経路はなぜダブルスタンダード?」で考察しておりますのでそちらをご参照ください。
アメリカ型ならまだ許せる
アメリカは規制が厳しい国から一転ダブルスタンダード型になりました。しかし日本との大きな違いは、だれでもすべての補聴器が扱えるわけではないという点です。アメリカはOTC補聴器を新たに認可して補聴器自体をダブルスタンダード(処方補聴器とOTC補聴器)にして処方補聴器は従来通り販売に資格が必要で、OTC補聴器は誰でも売れるようにした点です。また消費者は処方補聴器とOTC補聴器は似て非なる物であると分かりやすいのでコストは安く抑えて聞こえはある程度妥協するか、あるいはコストをかけてでも聞こえを追求するかの二者択一が明確にできます。ところが日本のように誰でもどちらの補聴器でも販売できる体制ですと処方補聴器とOTC補聴器の区別が明確でなく処方補聴器が不当に高いなどの誤解を生み混乱を招く結果になってしまいます。処方補聴器が高いのは、技術料が含まれているからなのですが誰でも販売できるせいでその技術が十分提供されていない場合があるいう事実が問題なのです。また処方補聴器の下手な供給のされ方をすると、かえってOTC補聴器の方がパフォーマンスが良くなる逆転現象が起きることも考えられ補聴器業界全体の信用問題にもつながってしまいます。
自己防衛
マイスター制度の国や実時測定が義務の国なら技術者に任せて安心なのでしょうがこの日本ではリテラシーを高めて購入先選びを間違わないよう自己防衛するしかありません。色々調べてあなたの厳しい目で選択してください。私のブログを一通り読めば問題点がはっきりすると思いますので参考にしてください。私が3か月かけて作った動画「補聴器購入ガイド」はあるのですが内容が詳しすぎてドクターや言語聴覚士に勉強になったとプロが喜ぶ内容なので全て理解するのはむつかしいですが、断片的にでもわかれば十分参考になると思います。下に張り付けておきますのでご覧ください。ハラダきこえクリニック北浜はこの状況を憂い、世界標準を目指して設立した施設です。何人か私の同志が同じようなクリニックを運営していますが極めて数が少ないのが現状です。いつかは、こういうやり方が標準となるように補聴器外来開設支援活動をしております。
文責:原田

