目次
補聴器選びの本はなぜ存在するでしょうか
「補聴器選び」に関する書籍はあまり多くはありませんが存在します。別にそういった書籍を頭ごなしに否定するつもりはありませんが私には強い違和感を感じています。今日本では「世界の補聴器制度をAIに訊いてみた」で述べたように無資格で補聴器を販売しても合法な国であるがために補聴器が一般のヘルスケアグッズ的色合いが強くその情報誌が存在するのだろうと考えてます。「薬のやめ方」や「作用がわかる本」など現代医療に対して懐疑的な本はありますがさすがに「医薬品選び」なんて書籍はありませんね。そもそも医薬品は医師の処方箋がないと入手できないし、用法・用量も厳密に規定されています。医薬品の添付文書の内容が書かれていても医療関係者以外はチンプンカンプンなので選択権が与えられたところで選択するのは実質不可能であり、間違えると大変危険です。仮に患者がどうしてもA薬が飲みたいといって医師が勧めるB薬を蹴って押し通したとします。それは、医師の責任を放棄したことになります。A薬を服用して効果が全くなく医師にクレームを入れたとこで「だから言わんこっちゃない」と言われるのが落ちです。ただA薬で取り返しがつかない副作用が出る可能性があれば処方が拒否されるので最悪の事態は免れるでしょう。間違った選択をしないようにするにはあなたが医学、薬理学を勉強し添付文書が読めるだけの知識を身につけなければなりません。たいていの人は日常生活するのが大変でそんな暇はありません。実績のある医師を探す方がよっぽど現実的です。
だから言わんこっちゃない
実は、当クリニックでも同じことが起きました。メーカーを指定して試聴をしたいという方がおられました。ただA社の故障率が高かったのであまりお勧めしませんでしたが、どうしてもということでA社の補聴器を試聴することになりました。それで結局は「だから言わんこっちゃない」という結果になりました。何か異音がするとのことでしたがメーカーからは異常なしとのことでした。メーカーが言うには湿気が原因だろうとのことでしたが、本人は納得されないのでメーカーから直接説明してもらうことになりました。納得する回答が得られなかったのでその補聴器の購入は見送られることになりました。ユーザーがカタログで補聴器を選ぶとこういうことはこういうリスクがあるのでご自身で選択されない方がいいと考えています。ただこれも難しいところはあって補聴器を純粋に医療装具として扱っている機関にいえることであって一概にはそうとは言えません。
委任するということ?
権限を委任することとはどういうことかについてちょっと物騒なたとえ話を挙げてご説明します。ある日あなたの下へ本人しか受け取れない分厚い一通の郵便物が送られてきました。よく見ると裁判所からの訴状でした。そんなことはあるはずがないと思われているかもしれませんが、実際私のもとに私有地に生えている木で子供がけがをした(真偽不明)と損害賠償訴訟の訴状が来ましたので人生何が起こるかわかりません。さてどうしていいか何もわからないあなたは慌てふためきます。あなたはほとんど身に覚えがなくても被告人になった時点で絶対逃げられない状態です。訴状に記載されている請求通りに支払うか、争うかの二者択一です。普通はここで弁護士に相談すると思います。六法全書片手にあるいはAIに相談しながら本人訴訟なんてことは間違ってもしないでしょう。そんなことをしたら仕事に支障をきたし最悪の場合失業なんてことになりかねない。このような場合は簡易裁判での争いとなりますので弁護士を被告代理人に立てるとあなたは一度も裁判所に出頭する必要がなく結審あるいは示談交渉まで任せることができます。結局私の場合は、裁判所からの示談勧告を受けそれが少額でしたので私が合意し、少し額を水増しして原告側も合意に至りました。そう聞くと弁護士に依頼することが最善かもしれないと思われるでしょうが、費用を考えると怖い気がするかもしれません。そんな時は、法テラスに相談することをお勧めします。損害賠償は原告側がありえない額を吹っ掛けてきますからプロに頼らないと、とんでもないことになります。面倒な法的手続きや法廷審議、示談交渉、示談金支払いなどすべてお任せできて途中経過も報告してくれます。
自分で選択するとなると
自分で補聴器を選ぶのは、自分で法廷闘争して勝訴するくらい難しいと考えています。まずあなたは聴こえるとは何ぞやということを知らなければなりません。最低限の解剖学、生理学、音響学が分かれば聴こえの仕組みはわかるでしょう。それから、オージオグラムの読み方と語音検査を勉強し、耳鼻咽喉科で聴力を測ってもらってその結果をいただいてあなた自身がどのような状態か把握します。例を挙げると高音が弱いのでサ行とカ行の聞き取りが弱いので高域の増幅が必要そうだと判断したとしましょう。すると高域がきれいに聴こえるメーカーと器種の情報が欲しくなりますが、カタログには「○○ヒヤリング」、「AI搭載」、「毎秒○○回処理するチップ搭載」と言った技術をアピールする美辞麗句しか載っていません。高音がきれいな補聴器の情報は、補聴器を普段扱っている現場にしかありません。仕方ないので信用のおける販売店を探して相談することにします。あなたは情報を集めた結果、認定補聴器技能者がいる認定補聴器専門店の存在を知ります。何軒か候補を選び公式サイトを見たり、電話などで問い合わせたりして店舗のレベルの吟味を行います。なかなか納得できる応対がなかったのですが、自分の目にかなった店舗がやっと見つかりました。あなたの推す器種と店舗側が推す器種を話を聞きながら検討して店舗の推す器種に決定しました。ここまですれば恐らく満足できる結果が得られる可能性は高いと思います。結局最初に選択した機種にはなりませんでしたが、それもご自身の判断で変更されただけで自分で選択したことに間違いありません。ここまでできるならば私は何も申し上げることはございません。
それでも「補聴器選び」しますか?
ここまで読まれた賢明なあなたはこれでもご自身で補聴器を選択しますか? 仮にご自身で選択されたとして、当院では間違った選択でなければなおかつ取り扱い機種であれば補聴器外来での試聴をお受けしますが、ふさわしくないと判断した場合は結果に責任が持てないのでお断りしています。こちらの判断で想定した結果が得られない場合は、別の機種に変更するなどして対応しております。しかし、補聴器も医療であり不確定要素の多い分野ですので補聴器以外の方法も検討することにしています。補聴器が適合しない例についてはこちらの責任で機種変更を1回のみ行います。補聴器適合に関しては、機種変更による差は微細なため再び補聴器が適合しない場合は、補聴器不適合と判定します。その場合は人工内耳などの別の手段を検討するか、適合が不十分でもなんとかコミュニケーションが取れるなら購入も検討します。我々も経験上できるだけ会うものをお選びいたします。その機種で効果が十分出た場合にほかの機種を選んでもそんなに効果に違いが出ません。間違った器種選びでなければ器種が変わったところでそれほど効果に差はありません。大切なのは、正しく選択されておれば一番大切なのは調整です。どこで買うかを選ぶのが一番大切であるということです。
文責:原田

