補聴器のかゆみ対策

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聞こえ方以外で多い訴え

補聴器診療をやっていますと様々な聞こえに対する訴えがあります。自分の声が響く、騒音がうるさいなど大体は聞こえに対する訴えなのですが、聞こえ意外に多いのは耳のかゆみです。装用してすぐにかゆみが生じることはまれで長時間するとかゆみが出てくることが多いようです。補聴器による聴覚リハビリテーションは長時間の補聴器装用が必要なのですが、結構かゆみの問題でそれを阻むことが良く見られます。長時間と言えど連続でなければならないことはないので休憩をはさんでもいいので1日10時間以上を目指すように指導しています。

原因

菌の増殖

耳穴型補聴器は本体が外耳道を密着する範囲が広く機密性が高くなり、皮膚との接触部位がどうしても蒸れやすくなります。耳掛け型やRICタイプの補聴器でもイヤモールドを使用すると耳穴型と同じように蒸れやすくなります。外耳道の皮膚の汗腺や皮脂腺、耳垢腺から分泌される分泌物が補聴器やイヤモールドとの接触部に貯留してくると細菌にとって格好の培地となり、増殖して異臭を放ちます。よく補聴器が臭うとおっしゃる方がおられますがまさにこの状態です。この状態は強烈なかゆみをもたらす原因になり得ます。対策はとにかく清潔と乾燥です。細菌増殖までには時間がかかるのでそうなる前に補聴器を固く絞った酒精(アルコール)綿かウェットティッシュで表面のぬめりをとるようにしましょう。くれぐれも音の出口を濡らして故障させないように注意してください。外耳道も消毒したいですが下手に触って皮膚の角質に傷をつけてしまうとかゆみを助長してしまうので、数分間補聴器を外して乾燥させるだけで十分です。

接触性皮膚炎

補聴器の耳栓や耳穴型の補聴器のプラスチックには、特定の化学物質を含んでいる可能性がありそれらが皮膚に接触することによりアレルギー反応を起こしかゆみを起こします。接触してから12~48時間でかゆみが起こると言われています。先ほどの最近増殖の対策をしているにもかかわらずかゆみが起こり、局所の発赤や腫脹が起こる場合はアレルギーを考えるべきでしょう。対策は補聴器の接触部分に非アレルギー性物質のコーティングを施したり、補聴器本体を組織の親和性の高い金属であるチタン製にするなどの方法があります。

機械的かゆみ(アロネーシス)

尖ったものが皮膚に強く当たると痛みを覚えますが、軽い場合は脳はかゆみとして感じてしまいます。この現象をアロネーシスと呼びます。下着のタグなどが皮膚に当たるとかゆみを覚えることがありますが、まさにその現象です。耳掛け型の既成耳栓は耳の形をしていないので外耳道の皮膚にピンポイントで当たる部分ができやすく、この現象をよく引き起こします。対策はピンポイントで皮膚を刺激しない構造にすること、つまり接触物が皮膚にまんべんなく当たる構造にする。つまりカスタムメイドの耳穴型の補聴器にするか、耳栓をイヤモールドにして力が一点に集中しないようにします。

持病としての皮膚病

元々基礎疾患として皮膚病に罹患している場合があります。アトピー性皮膚炎の場合は皮膚のバリアが弱いですので補聴器装用で悪化することは十分に考えられます。軟膏処置をしながらの補聴器装用となりますが、軟膏が補聴器内部に入ると即故障を起こすので薄く塗布するとか本格的な軟膏処置が必要な場合は補聴器の使用制限をするとかの対策が必要です。乾癬の患者さんもおられましたが症状のひどいときは、必要なとき以外は使用を見合わせてもらうようにしました。まずは専門医にきちっと治療してもらうようにお願いして、補聴器装用は症状に応じて制限をかけるようにしています。

最悪の対策

補聴器装用の有無にかかわらず耳のかゆみの対策としてもっとも行ってはいけないことは、耳かきや綿棒で掻くことです。皮膚の確執層を破壊し、異物が真皮層に到達しやすくなり必ずかゆみは悪化します。細菌が侵入すると外耳道炎を引き起こし腫脹や激しい耳痛が出現することがあります。そうなると補聴器は使用できませんし、症状が治まるまで数日から10日くらいかかります。かゆみが激しくなる前に対策を講じることが大切です。

かゆみはある意味不可避な問題

原因がいずれの場合にせよ、かゆみ対策は補聴器装用において重要な問題です。補聴器は患者さん本人にとっては、なくてはならぬ存在なのですが生体にとっては異物であることには違いありません。異物が外耳道内に入ったらトラブルを起こすのは当然といえば当然の結果です。補聴器を使うということは不自然なことをするという自覚をもって、対処するしかありません。補聴器のかゆみでお悩みの方々へ、当クリニックで行っている対策を参考にして快適な補聴器ライフをお送りいただければ幸いです。
文責:原田
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