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耳掛け型がかつては主流
一般的に知られているのは、本体を耳介の後ろにかけ耳栓を外耳道内に挿入する耳掛け型補聴器だと思います。1960年代に日本で生産されてからは補聴器の主流になっていました。今は音の出口であるレシーバーが外耳道内に入るRIC(Receiver in the Canal)タイプ(以下RIC)が一般的になりましたがかつては本体にレシーバーが内蔵されておりフックという伝声管を通りチューブを介して耳栓につなげるBTE(Behind the Ear)が主流でした。外耳道内にレシーバーが入らないので大きさの制限がRICより少なく高出力型を作りやすいので今でも高度難聴者用の高出力タイプはBTEを使用します。音の出口が鼓膜に近い方が響きは少なく音はすっきりしますのでその点ではRICのほうが有利です。本体も小型化されBTEよりおしゃれなのでRICタイプは瞬く間に普及し、いつの間にか耳掛け型の主流になりました。今では耳掛け型といえばRICのことを指すようになりました。
耳穴型の登場
耳穴型補聴器がいつから登場という明確な資料は見当たりませんでしたが、現存する資料によると1960年代にシーメンス社からITE(In The Ear)という耳甲介にぴったりはまるタイプの物が開発されたようです。スターキー社が量産技術の基盤を造り1970年代よりオーダーメイド補聴器として急速に普及させました。その後ITC(In The Canal)主に外耳道に入る型、CIC(completely In the Canal)完全に外耳道に入る型、IIC(Invisible In the Canal)見えない補聴器とどんどん小型化が開発されました。一時はより小型に見えにくいものを希望される方が多く見られたのですが、RICタイプも小型化され目立ちにくくなり、Bluetoothなどの通信機能が付いたものを希望されるケースが増え小型タイプの耳穴型を希望する方は減少傾向にあります。
耳掛け型の特徴
一時期は耳穴型が主流(約80%)になった時期もあったようですが、RICタイプの耳掛け型の補聴器が登場してからRICタイプが主流になりました。現在主流はRICなので耳掛け型といえばRICを指しますが特徴は以下に別々に説明いたします。
BTE補聴器
本体にレシーバー(音の出口)が配置されておりフックとチューブで音を送るために高音域の減衰がRICや耳穴型と違って大きくなります。また歪みもどうしても大きくなります。しかし大型のレシーバーを内蔵できますので高出力型の補聴器を容易に作成することができます。特に重度難聴の方には、BTE+イヤモールドが第一選択になります。
RICの特徴
本体にレシーバーはなくワイヤーでレシーバーと耳栓(またはイヤモールド)をつなぎワイヤーを耳介にかけ耳栓を外耳道に入れます。本体にはレシーバーがなく小型にできます。またレシーバーがから鼓膜までの距離が短くなるので高音の減衰が少なくなるのでBREよりクリアにスッキリ聞こえます。
耳穴型の特徴
耳穴型の補聴器はカスタムメイド(オーダーメイド)が主流ですが、レディメイド(既製品)のものも存在します。耳型を採取しメーカーに送りその型に合わせた補聴器を作製します。シェル(補聴器の外殻)は耳の形にぴったり合うように作られているためプラスチックやチタンなどハードな素材でできています。柔らかい素材は必要ないので使われておりません。しかしレディメイドの補聴器はシェルは外耳道にぴったり接触する形にできないためにBluetoothイヤホンの様に外耳道より小さく作り先端にシリコンゴム製の耳栓が付いておりこれにより本体を固定します。その分どうしても耳栓の分だけ本体が外耳道から飛び出てしまいます。また耳栓だけで固定するのでぐらつきや外耳道の深い部分の圧迫感が生じることがレディメイドの欠点です。以上から当院では特別な理由がない限りカスタムメイドをお勧めすることにしています。これ以降はカスタムメイド補聴器についての長所を述べたいと思います。ITE以外は目立ちにくく特にCICやIICは補聴器を装用しているのが見えることはほとんどありませんが外耳道が基準より細いと作製することができません。小型で奥に入るほど聞こえは自然に近くなり余計な響きやこもりは減少する傾向にありますので、この点においてはCICやIICは有利です。また着脱に慣れると片手でワンタッチでできる簡便さがあります。またメガネやマスク装用者にとって邪魔にならない点も耳掛け型より有利です。
短所は本体が共鳴しやすいのでこもり感がどうしても強くなる傾向にあります。慣れるとどうってことはないのですが、どうしても我慢ができない方もおられます。顎関節の関節骨頭が本体を直接揺らすために咀嚼音が大きくなる傾向があります。人の感性は面白くこれが苦手な方もおれば、食事の実感があるので気にならない方もおられます。また自分の声が大きくなるのはどの補聴器でもあるのですが耳掛け型の補聴器よりは強い傾向があります。私も最近補聴器を装用する機会が増えましたが普段使うのは耳穴型です。私の場合は、耳穴型の欠点より利便性の方が勝っていて耳掛け型を普段使おうとは思いません。
耳穴型と耳掛け型の二元論には無理があった
耳掛け型か耳穴型どちらが優れているという二元論には無理があると書いている最中に気づきましたのでこれからはもう少し細かく分類して述べます。耳掛け型の場合耳栓の形に種類があります。耳掛け型もRICタイプとBTEがありしかも機種によって大きさや形がかなり違います。耳栓もそれぞれに既成耳栓とイヤモールド(かすたむ耳栓)があります。耳穴型もITE、ITC、CIC、IICがありカスタムメイドとレディメイドがあるので二元論で単純に比較することはできません。同じ補聴器でも仕様により特徴がかなり変化します。自分でこのようなテーマで書いては見たものの簡単にはいかないことに気がつきました。そこで補聴器に何を求めるかでどういうタイプにするか決めた方がいいような気がします。そこで装用者のご意向によりどういう選択肢があるかを述べたいと思います。また聴力によっては選択肢が制限されることがあることをご了承ください。
何を求めるか
補聴器に求めるものの一丁目一番地は、「良質な聴こえ」になるのは間違いないと思います。そのうえで次に何を求めるかです。人により見た目だったり、通信機能であったり着け心地、音質などがあるでしょう。もちろんできるだけ本人の意思を尊重したいと思いますが、どうしても医学的制約により叶えられないこともあります。医学的制約により叶えられない例から述べたいと思います。
目立たない(小型)
目立たないというとCIC、IICなどの小型耳穴型の補聴器が思い浮かびますが、RICの小型の補聴器でもあまり目立ちません。この選択ができないケースは、高度難聴や重度難聴で小型だとどうしても出力不足で余裕をもって鳴らすことができません。少し大型のRIC+イヤモールド(カスタムメイドの耳栓)か重度難聴の時はBTE+イヤモールドが選択されます。耳栓も既成のシリコンゴム製のものだと隙間ができてフィードバック(漏れた音をマイクが拾いピーピー鳴る現象)を起こしますのでイヤモールドは必須です。耳穴型にするにしても大型のITE(耳甲介にぴったりおさまる)が必要になります。
音がこもりにくい
音がこもるのは、低音が外耳道で共鳴することにより起こります。耳穴型にベント(空気抜きの穴)を大きく開ければ低音が抜けやすくなります。一番こもらないのはオープンフィットという網目状の耳栓で1kHz以下の周波数はかなり抜くことができるので非常にこもり感の少ない状態で補聴できます。しかし、これには医学的に大きな制約があり、1kHz以下の周波数の聴力が正常範囲である必要があります。1kHz 以下の周波数の難聴があればオープンフィッティングは使えません。補聴器持参の症例で低音部にも難聴がある症例にオープンフィッティングされている間違った例を時々見ます。音がこもるという訴えがある場合でも本来は500Hzの低音部の増幅も行わなければならないことを説明してある程度のこもり感は我慢してもらう必要があります。
あとこもりの原因は、耳穴型の補聴器本体の共鳴により起こる場合があります。またSPシェルのようにイヤモールドとレシーバーが一体となったものも音がこもりやすいです。イヤモールドはできるだけ閉鎖空間のないものを使ったりしてこもりの問題を解決します。耳穴だとCIC、IICなどの小型の方が音がこもりにくい傾向にあります。
付け心地
耳穴型は本体が外耳道に入るために多少の物理的(音響的でない)な閉そく感が生じます。その点RIC型補聴器は外耳道に入るものはシリコンゴム製の小さい耳栓かイヤチップと呼ばれる小型のイヤモールドになりますので耳に対する負担はかなり軽いのですが、私は耳穴型を使っています。なぜなら、片手で装用することができる、眼鏡のつるが当たらない、マスクのの着脱の邪魔にならないなど取り扱いにアドバンテージがあるからです。付け心地を優先しようとしてもそこに利便性が立ちはだかります。なかなかいいとこどりってできないものです。
選択できる条件
‐以上のまとめ‐
装用者がご自身の意向がほぼ反映されることができるには以下の条件を満たすことが必要です。
1.聴力が中等度難聴以下である。
2.外耳道が一定以上の太さが必要
3.できれば最高語音明瞭度は70%以上は必要
以上の条件が満たされればRICタイプでも耳穴型でもいずれのタイプでも選択でき、さらにはCICやIICなどの小型耳穴型も選択できます。
比較
耳穴型と耳掛け型の比較をまとめます。
どちらもバリエーションがあり直接比較は困難ですので大まかな比較になります。
| 特徴 | 耳穴型 | 耳掛け型 |
| 見た目 | ITE>ITC>CIC>IIC 目立ちやすさが小さくなる | RICはかなりすっきりする BTEはそれより大きい |
| こもり感 | 一般的にRICよりは大きい | RICはかなりすっきりする BTEはそれより大きい |
| 咀嚼音 | 顎関節の振動が直接伝わるので一般的に大きくなる傾向がある | 本体が揺らされにくいので耳穴型よりは小さい |
| 操作性 | 着脱が片手ででき一般的には容易 | 両手を要しRICは耳栓が小さいために少し入れにくい |
| その他 | メガネやマスクの着脱に影響なし | メガネやマスクの着脱の際に落下する可能性がある |
どちらも一長一短があり優劣をつけることはできずそれぞれのライフスタイルで選択すればいいと考えます。以上参考になれば幸いです。
文責:原田

