補聴器の実情
現代補聴器は、デジタル化によって入力されたデータに基づいて作動するようになっております。つまり補聴器の調整とは、聴力などの指標をもとに適切に命令系のデータを補聴器に格納することです。データ次第で役に立つか経たないかが決まるといっても過言ではありません。
一筋縄でいかない
適切なデータを格納するといってもそのデータを導き出すのは一筋縄ではいきません。理論的には聴力が決まればどのくらいの量の音の大きさを与えればいいかは医学的におおよそ決まっております。では計算でそのデータを決めてしまえばすべて解決となってしまいます。でも実際は意図したとおりの音量が鼓膜に到達することはまれです。
かく乱因子
様々なかく乱因子によって意図したとおりの音量がゆがめられます。補聴器のバラツキであったり、耳の形状であったり、耳栓の形状などあらゆるものがかく乱因子となり正しいと思われていたデータに襲い掛かります。そしてとんでもない音量が鼓膜に到達し、音量が足りなかったり大きすぎたり明瞭度が落ちたりします。
解決法
かく乱因子も考慮して最終的に鼓膜に意図した音量が届くようにしなければなりません。一番いいのは、実耳測定で鼓膜近傍の音圧を測定する方法です。これならすべてのかく乱因子を包括したデータを得ることができます。ただこの方法は調整するたびにプローブチューブをいう管を外耳道に挿入しその上から補聴器を挿入、テスト音声をかなり大きな音で聴いてもらう必要があります。患者さんへの負担が大きいので当院では、別の方法をとっています。
RECDによる実耳測定
この方法は最初にプローブチューブを入れて小さな試験信号で外耳道の音響特性を測ります。そのデータで測定器で測定した音響特性を修正して、鼓膜に届く音量を推定する方法です。寒邪船への負担が少なく、プローブチューブと同時に挿入が困難な小型補聴器にも採用できる優秀な方法です。当院ではこの方法を採用しています。実耳測定は普及率は数パーセントもないといわれています。優秀な方法であるだけにこれほどの低い普及率は不思議です。