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難聴と認知症との関連
The Lancetという世界的に評価の高い医学雑誌2017年版にRisk factor for dementia(認知症の危険因子)という記事が掲載されました。そこでは危険因子で最も影響力の大きいのが難聴であると記載されています。瞬く間に各種学会とりわけ耳鼻咽喉科関連学会に取り上げられるようになりました。認知症関連のYouTube動画でも取り上げられているのを見たことがあります。内科の先生が耳を大切にとおっしゃっていたので間違いないと思いました。認知症リスクファクターの記事はその後2020年、2024年と改定が行われましたが、依然として難聴が最も大きい危険因子となっています。このことはかなり一般にも浸透してきて認知症予防のために補聴器を希望されることが多くなってきました。

何故難聴が認知症の危険因子になるのか
ほとんどの人は難聴が何故認知症の危険因子になるか想像もつかないのではないでしょうか。一つは中枢系の音声信号の通り道である聴覚伝導路に音声信号があまり通らなくなるために廃用性萎縮が起こることによる脳容量異種による認知機能の障害があります。もう一つはコミュニケーション障害による社会活動の減少や社会的孤立により脳の刺激が減少することによる認知機能低下が見られます。それらが合わさって認知症の進行するといわれています。脳は絶えず刺激にさらされていなければ衰えてしまうということですね。
無症候性アルツハイマー病
アルツハイマー型認知症というのは、脳内にアミロイドβタンパク質が脳内に蓄積し神経細胞を死滅させることにより起こる認知症です。認知症の6割がこれに当たるとされています。ところが脳内にアミロイドβが蓄積しているにもかかわらず認知症を発症しない無症候性アルツハイマー病があると報告されています。そういった例は、ある共通点が指摘されています。社会参加を積極的にされているということです。孤立しないことがいかに認知症の発症を抑制するかの証明ではないでしょうか? やはり聴覚を大切にすることは認知症予防に寄与することは推察できると考えています。

補聴器は予防効果があるのか?
難聴の多くは感音難聴で主に内耳機能の低下によるものがほとんどです。すなわち弱った内耳機能を補完すべく音響エネルギーを増幅し効率よく送り届ける役割をするのが補聴器です。補聴器は聴覚伝導路の音声信号を装用前より増強することになりコミュニケーションが以前より取りやすくなります。コミュニケーションが容易になることにより社会参加が積極的に行われるならば認知症の予防になるといえます。難聴が脳への刺激を減らし、社会参加を阻害するから認知症リスクが増大するわけで難聴がなくても孤立していれば同じことがいえるでしょう。なので補聴器を装用してもコミュニケーションを持ち社会参加がなければあまり意味がありません。補聴器自体が医学的に直接働きかけて認知症を予防するわけではありませんのでご注意ください。コミュニケーションも社会参加も脳への刺激です。これがなくなると認知症のリスクが一番増大するというのは対人関係が最も脳への刺激になるということでしょうか? 歳をとってもコミュニティへの参加は積極的に行ってください。
文責:原田

